ローカライズ

『TO THE MOON』ローカライズの話とレビュー

2016/05/23

To the Moonのローカライズ時に気をつけた諸々のお話と、ものすごく個人的なPLAYISMスタッフからのレビューを書いてみました。

to the moon ローカライズ

ネタばれは控えようと思いましたが、ややネタばれしておりますので、できればクリア後に読むのをオススメいたします。

To the Moon ローカライズと諸々

本作は、『死の間際にある人の記憶を書き換える』というアイデアをコアに展開するアドベンチャーゲームです。ゆえに、非常に重々しい物語ではありますが、ニールとエヴァによるコメディチックなやり取りが挟み込まれることで、空気感を中和しつつ、先へグイグイ引っ張っていくようなスタイルになっております。ですので、日本語でもふざけるところと真面目なところはメリハリをつけて書きました。

また、海外の小ネタとかダジャレが大変でしたね。とにかくニールがボケ倒しだったので、非常に苦労しました。

また、プレイヤーが映画やドラマ、アニメを見ているかのようなプレイ感になるようにしようと思いながら、また当然ながらセリフ一つひとつ、過去と未来の話が伏線になっているよう、ちまちまテキストを調整させていただきました。二週目プレイすると、ああ、そういうことか・・・、となるようにいろいろ仕込んでおりますので、ぜひ周回プレイをお楽しみください。

To the Moonが描かないもの

さて、PLAYISMで行いましたレビュー企画が盛り上がっていたのが羨ましかったので、PLAYISM、というか、ローカライズをお手伝いした一スタッフからのものすごく個人的な見解による、To the Moonの楽しいポイントをご紹介したいと思います。

ローカライズ時にも一番気になった、気にしたのは、このゲームの世界には、記憶を書き換える仕事に疑問を抱く人は、誰もいないということです。ゲーム内の世界でもこの仕事はそれほど一般的なものではないようですが、え、そんなことしていいの?それってホントに幸せなの?と異議や異論を唱える人間はいません。

こういうちょっとぶっ飛んだストーリーのゲームって大抵、全然ぶっ飛んでない一般的な人物が主人公で、プレイヤーの感情を代弁してくれるのですが、本作にはそういう自己投影できる人物がどこにもいません。

「え、記憶を書き換えるって、今までの人生全否定じゃない?書き換える当事者以外の人間の気持ちは?」

などといったプレイヤーの葛藤とは、ずーっと離れたところでストーリーは展開していきます。

もちろん、ストーリー中にはいろんな悩みがあり、葛藤があり、白熱したりもしますが、たぶんプレイヤーが感じている葛藤には、一切言及しない。

そして、この物語は、素晴らしく綺麗に終わります。ものすごく美しく。でも、だからこそ、その実、ものすごく残酷な物語なのです。

だって、本当は、誰も救われてないんですから。それに気づくのは、プレイしている本人だけなんですね。

だから、気持ちがぐちゃぐちゃになるんですね。泣けるんだけど、何で泣いてるのかよくわからない。うれしいでも悲しいでもさみしいでもなく、複雑な気持ちが押し寄せるわけですね。

このあまりに美しく残酷な物語は、プレイヤーとゲームの間に最初から最後まで存在する『溝』があるからこそ表現できている、ように思います。

この、「ゲーム中で描いてない部分」が本作の妙、と言いますか肝なのかなと思いました。

このゲームって、ゲームのストーリーとプレイヤーの感情がひとつになることで、完成されるように出来てるんじゃないかなあ・・・と。ただ、海外のレビューを見ていると、わりと単純にハートフルなクリエイティブな物語として受け入れられているようですので、日本人が考え過ぎなだけなのかもしれません。

インタビューする機会があれば、一度聞いてみたいのですが、まずは続編を待ちたいなと思います。そこでもうちょっとわかるんでしょうね。

最後に

一応ですけど、最後に。ゲーム中にそういう葛藤が描かれないというのは、リアリティの欠如、とも言えましょう。良くはできてますけども、いかにも頭でつくったゲームですね、とせせら笑うこともできましょう。ゲーム内、ジョニーさんの葛藤の断片を、一瞬垣間見ることはできます。

to the moon

To the Moon、未体験の方は、ぜひに。

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