ゲームイベント

海外ゲームイベント成果報告 『PAX EAST』

2016/06/02

IMG_1966

海外イベントへの参加には、大きな予算が必要だ。海外マーケットへの展開をもくろむ我々PLAYISMであっても、予算や人員の都合上、あらゆるイベントにホイホイ参加することは適わない。限られた予算の中で、どこに出るべきかを考えなければならない。日本にだって、世界最大級のゲームイベント『Tokyo Game Show』があり、昨年からはインディー特化の『BitSummit』もスタートした。『デジゲー博』や『コミケ』や『ロケテショー』など、他にもいろいろある。なかには、海外メディアがやって来るイベントもある。

それでもやっぱり世界で販売していくには、世界のイベントに出展することも試してみたい……。というわけで、PLAYISM初の海外出展として2014年4月11日~13日 、アメリカボストンでの『PAX EAST出展』を実行した。

PAXとは

PAXは、来場者数およそ7万人ほどの世界有数のゲームイベントである。PAX Prime / PAX East / PAX Australiaと、アメリカ東西とメルボルンで年に3回開催されている。ビジネス向けイベントではなく、あくまでもゲームファンをメインターゲットにしており、また大手もインディーも分け隔てなく参加できるため、海外イベントの中でも、特にインディーにフィットしたイベントである。

このイベント、前回出た人には優先で案内が届くこともあり、毎年似たようなチームが出展し続けている。つまり、出展者の満足度は極めて高いのだ。それゆえ、新たに参加するチャンスは非常に限られている。次回のPAX Primeの出展も一瞬で埋まってしまった。出展自体が、実はなかなかハードルが高い。

今回、我々はPAX EastにIndie Mega Boothを通じて出展した。彼らはPAX内にIndie Mega Boothというスペースを先に買い取り、その枠に出る出展者を改めて募る形式を取っている。もちろん、スペースの都合上出られる数に限りがあるため、審査がある。「日本にはものすごいクオリティの作品が存在し、それを海外のゲームファンにもぜひ見てほしいのだ」というメッセージつきでいくつかの作品を送り込んでみたところ、『LA-MUNALA 2』『ケロブラスター』『アスタブリード』が選出された、というのが経緯である。

Indie Mega Boothとの最初の打合せで、担当者はこう言ってくれた。 「我々のIndie Mega Boothが、今年日本インディーズゲームを紹介できることを、非常にうれしく思っている」

さて、PAX Indie Mega Boothの出展費は、およそ20万円。出展スペースにテーブルひとつと椅子二つ。PCが3台とモニタが1台が支給されるとのことだった。この辺りはスポンサードされている企業からの提供だ。

1974107_732954233394145_2724898184564414747_o

しかし、一体何がどうなることやら。考えてみれば、我々も開発者のNIGOROも開発室Pixelもえーでるわいすも、皆初めての海外出展である。

いざ出展へ

4月11日、開幕直前。我々が出展した位置から、入場待ちの長蛇の列が見えた。1922488_732955586727343_8855331782435123275_n

この全員がゲーム好きというのもなかなかスゴイ。開場した途端、最前列の連中はダッシュする。ダッシュを注意される。早足になる。えーでるわいすのなる氏曰く、この辺はコミケと同じらしい。そして、我々のブースを通り過ぎていく。何だかんだでAAAタイトルへと一目散に飛び込むのだ。スタート直後、Indie Mega Boothはわりとガラガラだった。

マズイな…と思うのもつかの間、あっという間に『ケロブラスター』をプレイしに来た、『LA-MULANA 2』の開発具合を見に来たという人でブースは埋まり始めた。

1795181_732954483394120_6000321723410549838_o

そして、その2作品を目当てにやってきたはずのゲームファンたちが皆『アスタブリード』に注目するという奇妙な構図。結局3日間、ブースに人が途切れることはなかった。年齢も性別も様々で、海外ファンはゲームをプレイし、大いに喜んでくれた。 1292090_732954396727462_7260790233997717762_o

ちなみに、『ケロブラスター』はこの時点では、完成目前という段階であり、開発室Pixel天谷大輔氏はブースの裏で開発を続けている状態であった。

時々、彼目当ての訪問者がやって来る。

「ここに開発室Pixelがいるって聞いたけど、それはマジなのか」

「ああ、本当だ。あそこでカエルのスーツを着てゲーム開発している男だ」

「マジであれなのか」

天谷氏はそうしてやってくる一人ひとりにサインを書き、イラストを描き、再びゲーム開発に戻る。自由な空間だ。 1979983_732954283394140_6219857575053982171_o

「ちゃんとしたものをつくらないと、ヤバい」

海外ファンは正直だ。『LA-MULANA 2』の罠にはまり喜ぶ人もいれば、クソだと言って帰る人もいる。えーでるわいす なる氏は、初めて自分のゲームを女の子がプレイをするのを目にし、『Cool!』と連呼する姿を見て自信がついたそうだ。日本も海外も、同じだ。良いものをつくれば、伝わる。

少し話は脱線するが、インディーバブル弾けちゃう説が少し前に話題になった。この悩みは痛いほどわかるが、もはやインディーが増え続けること自体はどうしようもない。少なくとも日本国内では、インディーという開発スタイルは今後ますます流行るだろう。というのも、インディーはそもそも、AAAゲームのものすごい予算を掛けてものすごい利益を回収するという絶対に外せぬ大博打を打ち続ける開発に対しカウンター的に盛り上がって来た側面がある。予算と回収見込みを考え、インディーというスタイルを取るチームが増えるのは経済として必然の流れだと思う。「日本一ソフトウェア NEWBRAND」のように、インディーと銘打つかはともかく、今後ますます大手企業もインディー的スタイルでゲームをつくるだろう。

また、インディーゲームが流行ることは、開発者にとってもゲームファンにとってもプラットフォームにとってもメディアにとっても良いことだ。開発者は、好きなものがつくれる。ゲームファンは、いろんなゲームを選んで楽しめる。プラットフォームは、売り物が増える。メディアは、記事にするネタが増える。流行ることで、誰も損しない。今、日本はインディーバブルとまでは言わないが、インディーゲームという言葉が急速に拡がり始めた。

とは言え、インディーゲームとは開発スタイルの呼称であり、概念の呼称に過ぎない。インディーゲームが素晴らしいのではない。素晴らしいインディーゲームもあれば、素晴らしくないインディーゲームもある。これから、優れたインディー作品が次々と現れ、この言葉を引っ張り続けていかなければ、世界はともかく日本ではインディーバブル到来以前にインディーがしぼんでしまうかもしれない。

6月某日、開発室Pixel天谷氏と話をする機会があった。氏の新作『ケロブラスター』は、ご存知の通り極めてベーシックでクラシックな作品で、近年のインディーゲームの流行りというか文脈というか、『スキタイのムスメ』や『Risk of Rain』などの進化したドット表現とは無縁。そんなもん、知ったことあるかと言わんばかりの、単に好きだからつくりましたとは次元の違う、自分がつくりたいものをつくりきった快作である。 ケロブラスター

氏にゲームづくりの基準を尋ねてみたところ、

「ファイナルファンタジー5って、もう何十年も前のゲームなのに、今やっても、すごくよくできてますよね。あれ、初期レベルでもクリアできちゃうんですよ。でも、今あのゲームバランスを完成させられる人がいないって聞いたことがあって。あれから何十年も経って、ちゃんとしたものをつくれる人がいなくなってて……。だから、今ちゃんとしたゲームをつくらないとヤバいと思うんですよね」

図らずも日本インディーを牽引し続け、しかしインディーの盛り上がりを意にも介さず黙々とつくり続け、PAXで海外ファンのリアクションに生で触れ、そして超クラシックな『ケロブラスター』を放った天谷大輔からの、「ちゃんとしたものをつくらないとヤバい」というメッセージは、今こそ、重い。

今回の海外出展の一番の意義は、ドストレートな海外ファンに目の前でゲームを楽しんでもらうという機会を得て、「ああ、ちゃんとしたものつくらないとヤバいな」という至極当たり前の結論を再度思い起こさせてくれたことだったのかもしれない。

メディアへの波及効果

とは言え、海外出展はお金の面でも時間の面でも結構大変である。日本から一週間アメリカに滞在するとなると、どうやりくりしようと一人20万は掛かる。トータル経費としては今回の海外出展、6名参加で200万円弱也。準備も含めれば、半月仕事だ。これがプラスかマイナスか、最後はふわっとした話ではなく、イベント出展の成果をまとめたい。

メディア掲載実績

Polygon “Kero Blaster, Astebreed and the difference between ‘doujin’ and ‘Japanese indies’”

Operation Rainfall PAX East 2014: Hands-on: Astebreed

Operation Rainfall PAX East 2014: Video Interview with Studio Pixel

PAX East 2014: KERO BLASTER, from the creator of Cave Story

Destructoid “Astebreed is a bullet hell shooter where you fight aliens as a janitor”

Destructoid “PAX East 2014: La-Mulana 2 Interview”

Evolve “The 10 Best Indie Games at Pax East 2014″

Press Pause Radio “PAX East 2014: The Best Of The Indie Mega Booth!”

NAG “KERO BLASTER IS CAVE STORY DEVELOPER’S NEW PROJECT”

EGM NOW “The Hidden Gems of PAX East 2014″

2D X “PAX East 2014: Studio Pixel’s Kero Blaster had me at kero”

USGAMER “Gero Blaster: Because “Made for iOS” Doesn’t Have to Mean Brain-Dead”

Techno Buffalo “Kero Blaster Prequel, Pink Hour, Released for Free on Playism”

STEAM 1ST “Astebreed- Pax East Preview”

ファミ通.com “『ケロブラスター』、『La-Mulana 2』、『アスタブリード』3人の日本のインディーゲーム開発者に、海外出展の感想、新作への思いなどいろいろ聞いた”

などなど。

あとは『LA-MULANA 2』が何故かMicroSoftの冊子にPAX EAST期待のインディー的な感じで掲載されたり、当日のtwitch放送に呼ばれたり、大きな会社の偉い人に会えたり、数多くのインディークリエイターと出会えたりした。(費用対効果は出しにくいものの、普段会えない人に会えたという成果はやはり一番大きい)

10250133_732957030060532_3201547078210774481_n

Metascore掲載

PAX EASTとの因果関係は明示しにくいものの、リリース後、メディアレビューが集まり、『ケロブラスター』『アスタブリード』ともにMetascoreが掲載されたのは大きな成果だと思う。しかも今のところそれぞれ82と93というすさまじい点数を叩きだしている。点数はともかく、実はインディーだとMetascoreが出るだけで、なかなかすごいことなのだ。

さすがに日本からだと予算と天秤にかけてみると、絶対に毎年出るべき!とは言い難いが、日本国内にいる限りはこれだけのPRが難しいのも事実。Tokyo Game ShowやBitSummitの今後に期待しつつも、今のところは本気で海外で売りたいのならば日本国内で模索するよりは、とっとと一度海外出展した方が話は早いとは思う。

最後に

さて、いろいろ書いたものの、200万円でなく100万円で済むならば、これは間違いなくオトクだ。

日本には、クールなコンテンツを世界へ届けたい!という人をサポートするための助成金制度があるので、ぜひ活用頂きたい。複数の企業体で固まらないといけないなど制約はあるが、使えるものは使おう。我々も、今回株式会社アスタリズム(NIGOROの会社)と協力し、J-LOPを活用し、PAX EASTに出展した。

ただし、出展終了後、書類諸々出して検査が完了後に助成金(MAXで半金)が降りるため、先立つお金は必要である。(しかもこの検査が大分掛かる。ウチも未だに終わってない。)

長々書きましたが、何か皆様の参考になれば、これ幸いです。

参考リンク: Gamastora “Strangers in a Strange Land: Japanese Indies at PAX East 2014″   10258986_10152388321645522_157897555419414812_n

クロワルールシグマ

クロワルール・シグマ

-ゲームイベント